「真実かつ正確であることを保証する」の意味|契約の前提条件に関するリスクを整理
契約書を読んでいると、
「当事者は、本契約締結日において、真実かつ正確であることを表明し保証する」
といった記載を見かけることがあります。
法律用語に慣れていないと、
何を意味しているのか分かりにくい条項かもしれません。
しかし、この条項は単なる形式的な文言ではありません。
実務上は、
「契約を締結する前提となっている事実が正しいこと」
を確認する役割を持っています。
つまり、契約内容そのものではなく、
契約を結ぶ前提条件に関係する条項です。
この記事では、
「真実かつ正確であることを保証する」という文言が
どのような意味を持ち、契約上どのような状態を作るのかを整理します。
1.「真実かつ正確であることを保証する」とは何を決めるものか
この条項は、一般的に「表明保証」と呼ばれるものです。
簡単にいえば、
「契約締結時点で説明している内容や事実が正しいこと」
を約束するものです。
例えば、
- 必要な許認可を持っている
- 契約を締結する権限を持っている
- 他人の権利を侵害していない
- 反社会的勢力ではない
- 財務状況に重大な問題がない
といった事項について保証するケースがあります。
契約書の条文そのものというよりも、
「契約を結ぶ前提として相手が信頼している事実」
を確認するための条項と考えると分かりやすいでしょう。
2.この条項があると、どのような状態になるのか
表明保証条項があると、契約当事者は、
「契約締結時点の事実について責任を持つ状態」
になります。
契約は、多くの場合、
相手から説明された内容や提出資料を前提に締結されます。
例えば、
- この技術は自社が権利を持っている
- このサービスは法令に適合している
- この会社には重大な紛争がない
といった説明を信頼して契約することがあります。
しかし、後からその前提が事実と異なっていた場合、
契約そのものに影響する可能性があります。
表明保証条項は、
「契約内容」ではなく、
「契約の前提条件」
を固定する役割を持っています。
3.見落とされやすいリスク
見落とされやすいのは、
「契約書に書かれている義務」
ではなく、
「契約締結時点の事実」
が対象になる点です。
例えば、
- 権利を持っていると思っていた
- 許認可に問題はないと思っていた
- 他社との紛争は軽微だと思っていた
といった場合でも、
後から事実が異なっていたことが判明するケースがあります。
この条項は、
「将来こうします」
という約束ではなく、
「今こういう状態です」
という説明に関する条項です。
そのため、契約書を読む際に見落とされやすい部分でもあります。
4.他の条項との関係
表明保証条項は単独で存在するわけではありません。
特に関係しやすいのは、
- 損害賠償条項
- 解除条項
- 完全合意条項
- 知的財産条項
- 反社会的勢力排除条項
などです。
例えば、表明保証した内容が事実と異なっていた場合、
損害賠償や契約解除の問題につながることがあります。
損害賠償との関係については、
→「損害賠償条項とは?」でも解説しています。
また、契約締結時の前提条件という観点では、
→「完全合意条項とは?」も参考になります。
完全合意条項が契約内容を整理する条項であるのに対し、
表明保証条項は、
「契約締結時点の事実を整理する条項」
と考えると違いが分かりやすくなります。
5.実務で問題になりやすい場面
表明保証条項が問題になりやすいのは、
契約締結後に前提条件が崩れるケースです。
例えば、
① 知的財産権を保有していなかった場合
システム開発や制作業務では、
「成果物に必要な権利を持っている」
ことが前提になることがあります。
しかし、実際には第三者の権利を利用していた場合、
後から問題になることがあります。
成果物や著作権の帰属は、契約によって異なる場合があります。
著作権や利用権の考え方については、
→「著作権は移転したはずなのに使えない理由」でも整理しています。
② 必要な許認可が不足していた場合
業種によっては、
事業に必要な許認可を持っていることが前提になります。
契約締結時には問題ないと思われていても、
後から許認可に問題が見つかるケースがあります。
③ 重大な紛争を抱えていた場合
企業間取引では、
相手方の経営状況や法的リスクを前提に契約することがあります。
その前提が事実と異なっていた場合、
契約そのものへの信頼が揺らぐことがあります。
6.この条項を見るときの考え方
表明保証条項を見るときは、
「何を保証しているのか」
を確認することが重要です。
単に「真実かつ正確であることを保証する」と書かれていても、
- 何について保証しているのか
- どの時点の事実なのか
- 他の条項とどう関係するのか
によって影響は変わります。
また、表明保証条項だけを読んでも十分ではありません。
契約書を構造で見る考え方については、
→「契約書は条文単体で読んではいけません」でも解説しています。
重要なのは、
「契約内容」
だけではなく、
「契約の前提条件」
も確認することです。
7.まとめ
「真実かつ正確であることを保証する」という文言は、
表明保証条項として使われることが多くあります。
この条項は、契約内容そのものではなく、
契約締結時点の前提条件に関係する条項です。
そのため、
- 権利を持っていること
- 許認可を持っていること
- 法令違反がないこと
- 重大な問題が存在しないこと
などを前提に契約が結ばれるケースでは重要な意味を持ちます。
また、表明保証条項は、
損害賠償条項や解除条項などとも関係します。
そのため、この条項だけを読むのではなく、
契約全体の構造の中でどのような役割を持っているのかを確認することが重要です。
※契約書の条項リスクを、契約全体の構造から整理します
契約書リスク診断では、
表明保証条項のような個別条項だけを見るのではなく、
契約全体の構造を整理します。
・契約締結時の前提条件
・責任範囲
・解除条件
・損害賠償
・知的財産権
などがどのようにつながっているかを確認し、
「この条項があることで何が起きるのか」を判断材料として整理します。
契約締結の最終判断は依頼者ご自身が行うものです。
契約書リスク診断は、
具体的な交渉代理や紛争対応ではなく、
契約前のリスク整理を目的としています。
→契約書リスク診断の詳細はこちら
→具体的にどのように契約書を判断するのか整理した記事はこちら

